新参者II。

For HARUMA。

春馬のたたずまい/奈緒子。(F‐Directer interview2)

 

古厩監督が撮影前に会った時の春馬くんの印象を語っている。古厩監督が語ってる“安心”とは、少し違うけれど、、

 

ひとに“安心感”を与える人っている。なかなか繕ってそうできるものでもない。春馬くんも、“安心感”を与える人と私は感じている。

安心感を与えられる人のイメージはいつも感情が安定していて、優しくておおらかで攻撃的な言動をしない人、そんな感じだけど、、

春馬くんの場合は、誰にも優しいのはそうなんだろうけど古厩監督が「“キョトン”としていて何を考えているかわからない、、」と語っている様に、掴みどころがなく不思議ちゃんなところがあり、ある意味では安定はしているんだけれど繊細で不安定なところもあり、ハラハラさせるところや強気なところも垣間見せながらも、それでも人に“安心感”を与える、と言うほんとに不思議な人で、そこがたまらなく魅力的。

三浦春馬と言う役者は、“撮りたいとおもわせるたたずまい”それを、持った人。

 

 

 

映画『奈緒子』パンフレットより

古厩監督Interview

 

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高校の駅伝では、給水は部員がああやって立って渡すんですか?

 

実は、あれはフィクションなんです。ドラマにしないとと思って作った設定です。

実際の高校駅伝では給水ポイントを置くことも少なくて、それこそ「全国高等学校駅伝競技会」では、過去に一度も給水ポイントを設置したことないんですよ。

 

 

 

それをわかった上で、部員でもなんでもない奈緒子が雄介に水を手渡そうとするシーンを作ったのはなぜですか?

 

あれをやらないと雄介と奈緒子の関わりが作れないんですよ。原作コミックでは奈緒子は雄介の走りを見ているだけの事が多くて。だからあの給水のシーンを思いついたんですよ。少しだけふたりの繋がりが出来たナート」思ったんです。

 

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雄介と奈緒子との関係性を描くために他に考えたことは?

 

もう一つは一緒に走らそうと思って。途中フェリーを見に行くくだりがありますよね。

再会して、昔の事が原因で水を渡しそこねたから、今度は一緒に走る。二人の物語としてはここで終わってもいいぐらいで。一緒に走ったら、あとは奈緒子が雄介を見ているだけにしようと思ったんです。

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でも一緒に走る前のごみ捨て場の長廻しシーンもふたりの距離が伝わる古厩監督らしいいいシーンでしたよね。

 

言葉にならない感情を描きたいから映画をやっているわけで、心のなかでこういうことを考えていますっていうことを描くんだったら小説をやればいい。そういう思いもあってあのシーンはいれたんです。

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あのシーンでは奈緒子役の上野さんにどんな指示を出されたんですか?

 

基本には動きだけです。でもこれは直接聞いたわけではないんですけど、

彼女が撮影が始まって少しして僕が撮った「まぶだち」を観てすごく良かったって言ってくれてたみたいなんです。それで、あのシーンを書いたときに「樹里ちゃんこれわかる?」みたいな話をしたら「「まぶだち」の最初のシーンでしょ」って言ってくれ「まぶだち」の最初の方に子供たちが心のモヤモヤを形にできずボールを投げあったり、ただ身体を動かすだけのシーンがあるんですけど、それと同じ意図であることを汲んでくれていたのでだから何も言わなくても大丈夫でした。

 

 

 

 

今回、、上野樹里さんと初めてお仕事されてみて如何でしたか?

 

樹里ちゃんは心が揺れるとそれがまんまお芝居に表れるんですけどそこが物凄く魅力的で、リアクションするときにこんなに感情が素直に大きく揺れる役者さんを僕は初めてみたし、今回はそれを逃がさずにとらえることができいれば映画になるんだろうなと思ってましたね。

 

 

 

雄介を演じた三浦春馬さんの印象は?

 

はじめて春馬にあったとき、前の映画(恋空)の関係で金髪だったんですけど、あっ撮れるかもしれないって思ったんですよね。雄介がいる、とかではなかったけど、すごく安心したんです。

春馬の佇まい自体が撮りたいって思わせるものだったし、キョトンとしてて何を考えているかのかわからなかったけど、雄介はこれでいいのかっていう、その答えが最初に会った時に会った時にみえたのかもしれない。その判断は間違ってなかったですね。

 

 

 

 

西浦監督役の鶴瓶さんは、現場ではやっぱりムードメーカーだったんでしょうね。

 

そうですね。ものすごくそうでした。樹里ちゃんとも話をしてくれていたし、鶴瓶さんて絶対にサインを断らないんですよ。島にいってからサインをした人数って300人とかじゃきかないと思うんですよね。でもちょっとそうしてくれただけで、島の人たちは撮影にすごく協力してくれるようになって。そういう意味でもすごく助けられましたね。

 

 

 

 

 

壱岐島で撮影した印象は。

 

原作でも映画でも波切島って言ってるけど、そのモデルは壱岐島なんですよね。実は、マンガと実際の場所を写真で比較しているサイトがあって、それをスタッフみんなで見て"全部あるな"と思ったから、きちんとロケハンしてなかったんです。でも、実際行ってみたら全部ダメで。猿岩は小っちゃいし、島自体もマンガの様に小さい島じゃなくて。でもそれから探したら間に合わないし、一時はどうしようって?って目の前が真っ暗になりました。

ただ、コンビニもない、船が2日こなければスーパーの棚になにもなくなっちゃう島で、みんなんで合宿してやれたから集中してできたから良かったかなと思います。それに実際の舞台でやってるんだ役者たちは思っただろうし、僕らスタッフの覚悟も違ったし、島の人たちにしても、ちゃんと島に来て撮ってくれてるって思っただろうし、そういうことが大事で。マンガにでてくる場所はほとんど使っていないけど、あのマンガは壱岐島の人たちのほこりでもあるので、壱岐島で撮影することが何よりも大事だったと思います。

 

 

 

 

長崎市の印象は。

 

長崎市の風景って、すごく好きなんですよ。サンフランシスコとかってよく映画の舞台になるけど、あそこと似ていて、坂があって、路面電車が走っていて、海がある。全部面白いですよね。今回いっぱい(大好きな)電車を出せました。(笑)電車を撮りたいためだけに。ロケ地を長崎市にしましたからね。だけど、長崎市には、大きい道が基本的には2本しかなくて。しょうがないから、港沿いの道も使って撮影しました。逆に箱庭的なるのが嬉しかったですね。長野県で生まれて、山に囲まれて育っているから、ああいうところが落ち着くのかもしれない。それに坂だと、ずーと先の方まで見えるから、坂の町は表情がやっぱり魅力的になるんですよね。

 

 

 

 

タスキを繋ぐことが駅伝を象徴する行為ですけど、この映画では最後の大会までほとんどタスキを手渡すシーンが出てきませんね。

 

そうですね。

この映画を象徴するシーンなだけに出すなら1回だけだって気がしてたんです。握手とか抱き合うとか、離れていたふたりが遂に出会うとか、そういうのって映画の終盤で起こせることじゃないですか?それをあんまり前半ではみせたくないっていうか。

そういう瞬間が確実にある競技だなっていうのはわかっていたし、『タスキをつなぐ』ってテレビ中継を見てても言うんですけど、あまり本当はわかってなかったかもしれない。離れ離れになったふたりが出会う競技なんだってことをやっているうちに実感してきて。で、それが1回なら面白いとおもったんですよね。