新参者II。

For HARUMA。

ふれる(3)/日本舞踊、心に鎧とふたつの武器。

 

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浴衣を着ると、それだけで身の締まる思いに。

稽古とはいえ、心に鎧をつけるような舞台に立つときと同じ種類の気持ちになる。


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二〇一三年

1日本舞踊の稽古を体験するのは、初めてだったそうですね。

 

稽古着の浴衣を身につけてると、形からとはいえ、身の締まる思いがしました。雑誌の取材などで浴本や着物を着る機会はあるし、そのたびに凛とした気持ちになるけれども、今回ばかりはちょっと違いました。大げさかもしれないけれども、心に鎧をつけるような気持ちというか

 

 

 

 

心に鎧をつける?

 

はい、技術も知識もないなかで、浴衣をきちんと着て稽古場に上がらせてもらえたので、それだけで心強く感じたんです。

 

 

 

稽古場ではまず、特別な衣装も道具も使わない"素踊り”を先生に見せていただきました。

 

目線や両手の指先にまで神経が行き届いて、とても絵になっていましたね。流れるような優雅な動きのなかに、ぶれない力強さを感じたし、僕が言うのもなんだけど、さすがだなあと思いました。

 

 

 

 

その後、摺り足や構えなど基本の立ち居振る舞いを教えてもらいましたが、これまで習ってきた踊りとどう違いましたか?

 

まず感じたのは、重心の取り方が独特なことです。バレエみたいな西洋の踊りは重心が上にあるというか、一本の糸で吊られているイメージを持つのが基本ですよね。

踊りの基本姿勢といえばそれが頭に浮かぶし、舞台上で立ち姿を美しく見せたいときは特に、その姿勢を意識してきました。だけど日本舞踊の場合は、腰を入れて、なおかつお腹にも力を入れるから、重心が少し後ろに下がっているように見えるんです。それがとにかく新鮮でしたね。しかも太ももの裏とか、普段意識しない筋肉を使っている感覚がすごくあるんです。和服と洋服の違いもあるのだろうけど、動きそのものが違うんだなあと体で実感しました。決めのポーズもいくつか教えていただきましたけど、体をふらつかせずにビシッと止まるのはやっぱり大変。こういうポーズの基本をマスターできたら、現代劇にも応用できそうな気がします。

 

 

 

 

基本的な立ち居振る舞いをひと通り習って、難しかったのはどんなところですか?

 

意外と難しかったのは、扇子の扱い方。先生は、僕の使っていた扇子が新しくて固いから開けにくいんだってフォローしてくれましたけど、スムーズに開け閉めができなくて、指を挟んじゃったりもしましたし。扇子の扱いに気を取られていると、踊りがおろそかになってしまったりして、常に全体に意識を巡らせていないと、滞りなく動けないんです。

しかも役柄によって、立ち居振る舞いやセリフ回しがかなり変わってきますよね。

それは現代劇にも言えることですけど、日本舞踊の場合はより顕著で、そのぶん知識がとても重要になってくるんです。たとえば武士の役だったら、時代劇で見慣れていることもあって、なんとなく想像できるじゃないですか。堂々としていて、ドスの効いた低い声で・・・・・・、みたいなね。だけど大工さんの役をやってみるよう言われたとき、さっぱり見当がつかなかったんです。歩き方はやや前傾で、白い線を踏む感覚をイメージして、かかとは内側、つま先は外側に向けるようにと教えられました。大工さんは身のこなしが軽くないといけないし、注意深いしぐさをするから、そういう動きになるんでしょうね。よくよく考えたら想像できるのかもしれないけれど、それを日本舞踊の動きに置き換えるのは難しいですね

 

 

 

セリフ回しも、独特で難しそうな印象を受けました。

 

たとえば「気をつけておいでなされませや」みたいセリフは、言い回しとして馴染みがないから

 

 

 

 

 

 

知識としての武器と、稽古を繰り返すことで得られる武器。

このふたつの武器を役者としてバランスよく増やしていきたい


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それだけでハードルが高いんです。

動きもセリフも何度も繰り返し稽古をして、体になじませないと自分のものにならないんだなあと実感しました。時代劇を観る目が変わりそうな気がします。

 

 

 

セリフといえば、以前、長いセリフをリズムでしゃべってしまう癖があることに気づいた、というお話をしていましたよね。

 

そうなんです。リズムをつけると覚えやすいし、話しているほうも気持ちがいいから、いつの間にかそういうやり方が自分のなかで定番化していた時期があったんです。だけどあるとき、「セリフ回しがどんなにうまかろうが、聞き易かろうが、気持ちのこもった言葉には勝てない」とある役者さんが話しているのを聞いて、はっと我に返りました。たとえセリフを噛んだとしても、お客さんは舞台に立っている役者ほど気にしていないことのほうが実は多くて、それより大事なのは、気持ちが伝わってくるかどうかなんですよね。

 

 

 

そのことに気づいて、何か変わりましたか?

 

ほかの役者さんがどういうふうにセリフを発しているのか、すごく気になるようになりました。リズムに頼っていると、ちょっとズレてしまったり、予想外のことが起きたりすると、急に言葉が出てこなくなるっていう弱点があることにも気づきました。たしかにリズムで話すと、演じている本人としては楽なのだけど、映像で見たときに不自然な感じがしてしまうんです。いかにも演技をしている感じが出るというか、気持ちから出てきた言葉じゃないのがわかってしまう。要するに、自分の伴奏じゃないってことだと思うのだけど。自分の音で表現しないで、どこかで聞いたことのあるようなりズムに乗せて、セリフを発してしまっているんでしょうね

 

 

 

 

そういうことも踏まえて、稽古を体験して改めて感じたのは、どんなことだったのでしょう。

 

やっぱり役者として武器を増やすことの大切さですね。ひとことで武器と言っても、知識としての武器と、稽古を繰り返すことで得られる武器のふたつがあって、両方をバランスよく増やさなければいけないと思うんです。今回のような慣れない動きやセリフをひとつ取っても、現代に通用することだったり、そこから学べることは必ずあるはずです。一番怖いのは、何も知らないままやってしまうこと。テレビの時代劇なんかは、役者の所作が不自然だったりすると、ものすごい数の問い合わせが来るって、先生がおっしゃっていましたよね。所作指導の先生に頼りっぱなしの役者にも責任があると僕は思うし、ドラマを見ている人からすれば、そんな内情は関係ないじゃないですか。僕はまだ大人になってから時代劇をやったことがないですけど、いずれ役者として必ず挑戦したい場所でもあるので、自宿を持って演じられるようになりたいですね。

 

 

 

 

この先、海外で役者の仕事をやることになったときも、同じことが言えそうですね。

 

本当にそうだと思います。特別な事情がない限り普通に考えて、僕に与えられるのは日本人の役なわけじゃないですか。そこで僕は、好む好まないにかかわらず、日本人を代表する存在にならなければいけません。たぶんそれは、役者じゃなくても海外に出ていく人にはいえることですよね。もし外国人が見た日本の描き方に違和感を覚えたとき、自分の国に対して正しい知識がなかったためにうまく伝えられず、そのまま作品になってしまったら絶対に後悔すると思う。自分が役者として関わる以上は、演技だけじゃなく作品に対しても自信を持ちたいんです。そのためにも、日本舞踊のような自国の文化を知る時間を持つことは大事だと思っています。

 

 

 

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ふれるを読んで、、

春馬くんと語り合うように、、。

 

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